生活習慣病について
加齢に伴う動脈硬化は脳卒中、心筋梗塞などさまざまな病気を引き起こします。これらの動脈硬化性疾患による死亡は日本人の死亡原因の第2位で、約1/4を占めています。動脈硬化の危険因子のなかには加齢、性別、家族歴といった変えられないものもありますが、高血圧、糖尿病、脂質異常の3つの危険因子は治療によりリスクを減らすことができます。逆にこれらの危険因子が複数あると相乗的にリスクが上昇します。
当院ではリスク因子を、包括的に、エビデンスに基づき、管理していきます。
高血圧
血圧を下げることにより脳卒中などの心血管疾患が抑制されることは、世界中での多くの臨床試験で確立しています。減塩、運動、適正体重の維持などの生活習慣の修正でも血圧高値が続く場合は薬物療法が必要です。75歳未満の成人ではより厳格な目標値を目指していきます。
家庭血圧の測定を勧めており、血圧手帳を配布していますので、スタッフにお声かけください。
診察室血圧 (mmHg) |
家庭血圧 (mmHg) |
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75歳未満の成人 脳血管障害患者 (両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし) 冠動脈疾患患者 CKD 患者 (蛋白尿陽性) 糖尿病患者 抗血栓藥服用中 |
<130/80 | <125/75 |
75歳以上の高齢者 脳血管障害患者 (両側頸動脈狭窄や脳主幹動 脈閉塞あり、 または未評価) CKD 患者 (蛋白尿陰性) |
<140/90 | <135/85 |
糖尿病
糖尿病治療では食事療法、運動療法、薬物療法の3つが柱となります。 過去1~2か月の平均血糖値を反映するHbA1cが血糖コントロール状態の指標となりますが、目標は年齢、罹病期間などにより個々に設定します。低血糖を起こしやすい高齢者の目標には下限も設定されており、低すぎないことも重要です。
目標 | 血糖正常化を目指す際の目標 | 合併症予防のための目標 | 治療強化が困難な際の目標 |
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HbA1c(%) | 6.0未満 | 7.0未満 | 8.0未満 |
カテゴリーI | カテゴリーII | カテゴリーIII | ||||
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患者の特徴・ 健康状態 |
①認知機能正常 かつ ②ADL自立 |
①軽度認知障害~軽度認知症 または ②手段的ADL低下、基本的ADL自立 |
①中等度以上の認知症 または ②基本的ADL自立 または ③多くの併存疾患や機能障害 |
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重症低血糖が危惧される薬剤(インスリン製剤、SU薬、グリニド薬など)の使用 | なし | 7.0%未満 | 7.0%未満 | 8.0%未満 | ||
あり | 65歳以上 75歳未満 7.5%未満 (下限6.5%) | 75歳以上 8.0%未満 (下限7.0%) | 8.0%未満 (下限7.0%) | 8.5%未満 (下限7.5%) |
脂質異常症
脂質異常症は悪玉コレステロールとも言われるLDLコレステロールが高い、善玉コレステロールとも言われるHDLコレステロールが低い、中性脂肪であるトリグリセリドが高い状態を言います。この中でもLDLコレステロールは心筋梗塞の最も重要な危険因子です。狭心症や心筋梗塞を発症した方は二次予防としてより低いLDLコレステロール値を目標とします。また、糖尿病や慢性腎臓病、脳梗塞の方は高リスクとして低めのLDLコレステロール値の目標を設定します。
治療方針の原則 | 管理区分 | 脂質管理目標値 (mg/dL) | |||
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LDL-C | Non-HDL-C | TG | HDL-C | ||
一次予防 まず生活習慣の改善を行った後薬物療法の適用を考慮する |
低リスク | <160 | <190 | <150(空腹時)*** <175(随時) |
≥40 |
中リスク | <140 | <170 | |||
高リスク | <120 <100* |
<150 <130* |
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二次予防 生活習慣の是正とともに薬物治療を考慮する |
冠動脈疾患の 既往 |
<100 <70** |
<130 <100** |